めっき皮膜について
電気めっきと無電解めっきは何が違うのでしょうか。
どちらも、めっき浴中に存在するニッケルイオン(Ni2+)が電子を受け取ることにより還元され、品物の表面に金属として析出します。
外部電源により電極間に電位差を発生させ、陰極から電子を与えることにより析出させるのが電気めっき、化学反応(ある物質が酸化される反応)を利用して金属イオンに電子を与えることにより析出させるのが無電解めっきです。(無電解めっきは、化学めっきとも呼ばれます。)
電気めっきの場合、陰極から直接、電子を受け取るため、効率が良いのですが、
- 治具と品物の接点をしっかりと取り、電気の流れを良くする必要がある。
- 陰極と陽極の間に遮蔽物があると、電気的に陰になり、その部分の析出性が悪くなる。
- エッジ部分は電界集中により電流密度が高くなるため、めっきの膜厚が他の部位と異なる等の問題があります。
一方、無電解めっきの場合、化学反応を利用するので、めっき液と接触している部分は、一様に反応するため、均一な膜厚を得ることが可能です。治具の構造も、電気めっきと比較すると簡単な構造のものが使用できます。
ただし、同じ浴の中でも、局所的に温度分布が不均一であったり、液の循環が悪く、絶えず新しいめっき液が供給されなければ、その部分の析出性が悪くなるので、注意が必要です。浴全体を、如何に均一な濃度、温度に管理できるかが、良い皮膜を得るためのキーポイントです。
また、無電解めっきの場合、ニッケル以外にも還元剤を使用しますので、その一部の成分が皮膜中に取り込まれ、Ni-PやNi-Bの様な合金皮膜を生成することも特徴の一つです。還元剤としては、次亜リン酸ナトリウム、DMAB(ジメチルアミンボラン)、ヒドラジンなどが使用され、それぞれ異なった性質の皮膜を得ることが出来ます。
ベーキングするとどうして硬くなるのですか。
析出時にアモルファスであった皮膜が結晶質に変化するためです。
析出時に結晶質である低リン皮膜(SE-797)やカニボロンは、中高リン皮膜と比較して析出時の硬度が高くなります。
例えば、SE-666等の一般的な中高リンタイプのめっき液の場合、200℃後半から硬度が上がりはじめ、300℃後半から400℃までで、最も硬度が高くなります。(Hv900前後)但し、空気雰囲気下でベーキングを行なう場合、皮膜表面の酸化による変色が起こるため、外観部品では注意が必要です。
アルミやアルミ合金など、材質そのものが高温で脆化する可能性のある場合は、熱処理をしなくても硬度が得られる低リン皮膜(SE-797)やカニボロンを選定するのが良いでしょう。
カニゼンめっきが電気クロムメッキと比較して優れている点は何ですか。
- 均一な皮膜が得られる。
- ピンホールが比較的少ない。
- 品物との密着性がよい。
等の特徴があります。
両方の皮膜の長所を引き出すため、無電解めっきした上にクロムめっきすることもあります。
カニゼンめっきは塩水噴霧試験でどの程度もちますか。
膜厚に依存します。
数時間なら3~5μmもあれば十分ですが、それ以上保たせる場合は、膜厚を厚めに設定する必要があります。
具体的な時間が設定されているなら、加工事業部までご相談ください。
カニボロンはどのような特長を持っていますか。
ウェット環境下での摺動特性に優れています。また低温の熱処理(200℃)において高硬度(Hⅴ750以上)が得られます。
詳細は商品紹介をご覧下さい。
セラミックカニゼンはどのような特長を持っていますか。
SiCの複合皮膜であり、硬質クロム以上の耐磨耗性(Hv1000以上)を有しています。ヤスリで削られるように激しく磨耗する摺動部品に最も適しています。
詳細は商品紹介をご覧下さい。
セラミックカニゼンの原理を教えて下さい。
重力による自由落下によってNi-P皮膜中へSiCを共析するものです。品物の側面および底部にはほとんど共析しません。また表面全体に均一にSiCを析出させるためには、回転治具の使用等の工夫が必要です。
カニフロンはどのような特長を持っていますか。
ドライ環境下の中でも摩擦係数を低減でき、潤滑性を得ることができます。
詳細は商品紹介をご覧下さい。
カニフロンの原理を教えて下さい。
界面活性剤を利用し、PTFEを静電的に表面に吸着させる原理です。品物の上部、底部、側面問わず均一にPTFEが分散します。
カニブラックはどのような特長を持っていますか。
品物をめっき浴中に浸漬させると、瞬間的に黒色皮膜が表面に生成され、時間と共に黒色皮膜が連続的に成長し、必要な膜厚を得ることができる自己触媒反応のめっきです。低反射性・光吸収性等に優れ、光学部品やOA機器部品等に使用されています。詳細は商品紹介をご覧下さい。
カニブラックを外装に使用することは可能ですか。
カニブラックは、皮膜をブロッコリー状に析出させることにより、光を吸収しています。このブロッコリー状の凹凸が弱いため外装への使用は基本的には不可能です。但し『カニブラックⅡ』は凹凸の強度が高いため、力の掛からない箇所であれば使用可能です。
カニハステはどのような特長を持っていますか。
析出時の高硬度(Hv770)と高温環境下での高硬度(300℃下でHv560)を両立させた合金の無電解めっき皮膜です。高温環境下での摺動特性を強化するとともに、ドライ環境下での摺動特性も兼ね備えた当社の新開発皮膜です。